現在、地球温暖化の防止、原油高騰に伴うエネルギーコストの削減に対する燃料転換のニーズが高まりを見せているが、JFEエンジニアリングの環境事業部門ではこの動きをいち早く捉え、数年前から「環境エネルギー複合分野」を成長戦略の柱として位置付けている。
主力商品となっているのが「木質バイオマス化システム」と「バイオマスボイラ」の2つ。
前者は、従来、ごみとなっていたような間伐材や製材などをガス化して気体燃料を取り出し、ガスエンジンで効率良く電気と熱に変換したり、工業用加熱炉で利用する環境調和型のシステム。
後者はバイオマス燃料やリサイクル燃料を使用する循環流動層ボイラで、資源循環型への社会ニーズに応えるもの。今後はさらにトータルなソリューションを推し進めていこうとしている。
エネルギープラントに関する海外プロジェクトリーダーの経験が豊富で、環境との調和のためのプロジェクトを企画する福田さん。大阪でエネルギープラントの営業として知見を積み重ねてきた横尾さん。
二人が今どのように顧客を開拓し、会社をどの方向に牽引していこうとしているのか。そこからJFEの存在感、未来の可能性が見えてくる。
──環境プロジェクト営業部が取り組まれている木質バイオマスガス化システムとはどういうものでしょうか。
【福田】 木質バイオマスとは間伐材や流木、製材などのこと。従来は放置されたりごみとして捨てられていた木くずを集めて、エネルギーに活用するシステムです。ガス化して気体燃料を取り出し、効率良く電気や熱に変換していきます。これまでは小規模ビジネスとして使われることが多かったのですが、我々は産業用としてメガワット以上を生み出すシステムを目指しています。多くの産業用設備は、石油や天然ガスなど液体や気体の化石燃料に対応していますから、木質バイオマスもガス化して使うことにより、資源循環型のニーズに対応できます。現在、原油の値段が高騰し、燃料コストは上がっています。バイオマスを有効利用すればコストダウンとCO2削減につながるので、大きなビジネスチャンスが生じているのです。
【横尾】 もともと木質バイオマスのガス化技術はデンマークの会社で起こり、初号機が建設されました。当社はその技術を導入し、これまで2005年は山形県、2007年は石川県と、2つのバイオマスガス化発電設備を建設。世界で3つしかないうちの2つを手掛けてきたのです。更に3号機を岐阜県に建設中です。
【福田】 ガス化するにもエネルギー変換効率が悪いとだめなのですが、我々はアップドラフト式ガス化炉とガス精製設備の組み合わせで、高いエネルギー変換効率を実現するとともに、タール含有水処理設備を用いてタール含有水の処理を克服し、貴重なバイオマスエネルギーを効率的に活用できる画期的システムを構築しました。
【横尾】 当初はガス化して発電するシステムに力を入れて営業をしてきたのですが、近年は産業用ユーザーから、工業炉での活用に関する問い合わせが多くなっています。2006年からはエネルギーに関する事業企画からプラント建設まで経験豊富な福田さんにも加わっていただき、二人で戦略を練って営業に出かけることも多くなっています。福田さんをリーダーとするなら、私は作戦参謀というところでしょうか(笑)。
──現在の営業先はどういうところなのでしょうか。
【横尾】 当社は産業用ボイラの商談に当たるにも環境のエキスパートであることが強み。近年は製紙業界を中心にソリューション提案を本格化させてきました。その結果、「バイオマスボイラ発電」プラントの建設需要が伸びています。実際、製紙会社2社からJFE循環流動層ボイラの建設を受注し、工事に取り掛かり、一部は試運転から稼働し始めています。最近は繊維業界からの問い合わせもあり、メーカー中心に商談のきっかけもつかみやすくなってきました。
【福田】 お客様の特徴を一言でいうと、エネルギーをたくさん使う会社であること。コストダウンとCO2削減に本気で乗り出さないと会社の存亡につながるわけで、近年の原油の高騰と環境対策は切迫した問題なので、両方のニーズに私たちの出番もおのずと増えています。ただ設備導入には何十億円とかかるので、長期的視野に立ってお客様も判断する必要があります。当社としても単にプラントを売るという姿勢ではなく、長期のエネルギーと環境対策を見越し、真摯な態度でアプローチしています。
──仕事のやりがいはどんなところでしょうか。
【横尾】 仕事の状況は大きく二つ。一つはお客様にバイオマス関連の知識・ノウハウを持ったプロがいて、その要求に応える場合。もう一つは、お客様が当社をプロと判断して、当社の提案をしっかり受け入れてくれる場合です。特に後者の場合、どういう燃料をどう調達して、物流を効率的にするにはどうしたらいいか、さらに灰の処理はどうするかまで、さまざまに提案させてもらえることが大きなやりがいになりますね。グループ会社と連携して燃料を販売することもできるわけで、トータルに資源を活用していけることも当社の強みだと感じます。
【福田】 エネルギーコストの削減とCO2の削減、両方を一緒に提案できる会社は多くないわけで、引き出しをたくさん持っているのが当社の特長。もちろん、横尾君は文系出身ながら、これまでの営業経験と旺盛な知識欲から、お客様のニーズを引き出すのもうまいよね。
【横尾】 いえいえ。福田さんこそ、エネルギープラントの電気活用に関するプロフェッショナルで、経済産業省から会議に呼ばれるくらいのコンサルティング力の持ち主じゃないですか。普段もいろいろ参考になる話を聞かせてもらっています。お客様に対しては仕事の流れや技術に関することはしっかり相談に乗ります。その上で、営業は時に強気の提案をすることも大切だと感じます。たとえば自分に技術的知識が不足していても、「あの技術の方面にはこういう人脈がある」ということをお客様に提示することで、信用につながる場合がありますから。
──JFEにおける仕事の醍醐味はどこにあると思いますか。
【福田】 当社は日本一のリサイクルエネルギー会社だと自負しています。JFE環境などグループ企業と組んで、装置を含めた技術開発でいろいろなことを提案できるし、世界的な環境問題などに取り組みたい人はとてもいい会社だと思います。
【横尾】 当社は産業廃棄物処理のノウハウもあり、プラント屋でもありハードもソフトも両方対応しています。ものづくりとリサイクルをセットで考えなければならない時代に、その両方をパッケージして総合的な事業を提案できる会社は他にないでしょう。
【福田】 今後は、木質バイオマスを中心に新技術の投入を行いながら、プラント計画から燃料調達まで含めたリサイクル燃料転換に関する総合的なソリューション提案を強力に展開して、環境とエネルギー複合分野におけるリーディングカンパニーとして内外から認められる会社にしていきたいね。
【横尾】 同感です。ぜひトップランナーとして走り続けたいですね。
【福田】 今の部署は経験者が多いけれど、今後は若手も当然入ってくることになるでしょう。当社にはこうした環境問題やエネルギー問題に興味を持っている人がいいかな。社会貢献性の高い仕事に意欲ある若手にぜひ入ってきてもらいたいね。横尾君はどう思う?
【横尾】 最初から福田さんのようなハイパースキルは求めませんよ(笑)。柔軟な発想を持って自分の頭をフル回転させながら、お客様の満足のために愚直に取り組んでいける若手に期待したいと思いますね。